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石黒圭著『文章は接続詞で決まる』(光文社新書、2008年)

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いわゆる「文章読本」と呼ばれる本は、

これまでにかなりたくさん読んできました。

 

 

ここ数年は、仕事に直結するセールスライティングやコピーライティングに

関する専門書を中心に読んでいます。

 

 

学生の頃は、谷崎潤一郎、三島由紀夫、丸谷才一、井上ひさしなど、

文豪が著したものも随分読んだ記憶があり、

 

 

そして、そんな中でも、若い頃の僕に、

良くも悪くも最も影響を与えたのは、

朝日新聞記者本多勝一さんが書いた『日本語の作文技術』という一冊です。

 

 

有名な本なので読んだことのある方もいらっしゃることでしょう。

名著と言えば名著です。

 

 

しかしこの本、ジャーナリストを目指すならともかく、

セールレターや広告コピーを作ろうという若者にはあまりお勧めはできませんね。

 

 

この本を読むことで、文章構成に対する感覚は確実に鋭くはなりますが、

その反面、文章にアソビがなくなり、

読んでいて息苦しくなるような文を書いてしまうようになるからです。

 

 

読んで息苦しくなるセールスレターなんて、ホント最悪でしょ!

 

 

このように文章読本は、毒にも薬にもなるものですので、

何を読むかは書く内容などに合わせて慎重に選んでいきたいところですが、

それでも、お勧めは何? と、もし誰かに訊かれたとしたら、

「石黒圭さんの『文章は接続詞で決まる』。これだけは絶対読め!」と、

僕は迷うことなく言うでしょう。それは、もう即答です。

 

 

接続詞とは、文と文をつなぐ単なる接着剤や、

ブリッジのようなものと思われがちですが、そうではありません。

 

 

日本語の中では運用ルールが曖昧で、

使い手の恣意に委ねられることの多い品詞であり、

ここには、文章の機微や書き手の個性を生み出す力があると言うことができます。

 

 

「敗者はみじめだ。(A)美しい。」

この(A)にどんな接続詞を入るか。「しかし」、「そして」、「だから」…? 

 

 

(A)に何を入れるかで、文の情趣が全然変わってくることを、

この一例から感じていただけるのではないでしょうか。

 

 

「文章は接続詞で決まる」とは、

この行間にあふれる日本語独自の創造性を指して言っているのです。

 

 

しかし、従来の文章読本では、使用ルールが曖昧で運用が恣意的であるがために、

順接、逆説、並列、換言など、いわば記号化できる論理学の文脈のみで、

接続詞は解説されることが常だったのです。

 

 

その点この本は、そこからはるか先の深みまで突き進みます。

 

 

四種十類二十二系に接続詞を分類し、

二十二系の中のグラデーション(「しかし」、「だが」、「けれども」…の違い等)

までを見事に描き切ります。

 

 

また書き言葉だけでなく、話し言葉の接続詞にまで踏み込み、

そこではよく使う接続詞によって導かれる、個人の性格分析など、

秀逸かつ独創的な指摘にいちいち唸らされます。

 

 

そして、最終11章「接続詞と表現効果」――この章の感動は、

僕レベルの書き手では到底上手く説明できません。ぜひご自身でお読みください。

 

 

とにかく、この本は、ジャーナリストだろうが、

コピーライターだろうが、詩人だろうが、メルマガ担当者だろうが、

日本語でモノを書こうとする方にとって必読です。

 

 

これを読まずに、日本語で文を綴るのは危険とすら、

僕には感じます。それくらい強くお勧めできる一冊!

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