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『人間学×マーケティング』

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神田昌典・池田篤史 著
『人間学×マーケティング』(致知出版社、2019年)

致知出版社×神田昌典……。う~ん、濃い、これは濃すぎる。エノケン×ロッパ、王×長嶋、馬場×猪木……、例えが古すぎてナンですが、これらに勝るとも劣らない強烈な組み合わせであり、夢のタッグと言えますよ、これは。タイトルを見ただけで胸焼けがしてきます。しかし、本当に美味しいものを食べるには、多少の胸焼けは覚悟が必要というもの。この本を読み終えて、2,3日経ちましたが、僕の中ではいまだにムカムカしたものがあります。こういう読後感はホント久しぶりです。これは背油多めの極上こってり系ラーメンのような名著です。もうしばらく後を引きそうな気がします。……

 これからの時代を生き抜き、未来へと続く企業の姿に思いを馳せたとき、著者は、渋沢栄一著『論語と算盤』の中の次の言葉に出会います。
 ソロバンは、『論語』によってできている。『論語』もまた、ソロバンの働きによって、本当の経済活動と結びついてくる。(渋沢栄一著『論語と算盤』)
 ここで言う「ソロバン(算盤)」とは、金勘定のことで、企業の営利活動、マーケティングを指しています。一方、「論語」とは何か。それは企業哲学に基づいた、社会的責任、企業倫理などを果たしていくことを言っています。「算盤」と「論語」――、両者はこれまでの企業においては、どちらかが
伸びれば、どちらかが縮むといった、アンビバレントな関係性になりがちなものでした。しかし、渋沢栄一が喝破したように、本来これらは不可分かつ表裏一体のものであり、ともに増進させていくことに企業の使命はあります。そこにこれからの企業の持続可能性を求めている点こそが、本書の瞠目。「論語」と「算盤」、その両立の方法とは一体何か?
 そのための7つのレッスンの行程を記したのが下の表。
 ここで注目していただきたいのは、このレッスンの順序です。経営者から始まり、次いで幹部、そして最後に社員と、上から下へという順になされます。本書でも引用されている京セラの稲盛和夫氏の言葉「企業は経営者の器以上のものにはならない」が示すように、会社を変えたいと思うならば、まずそう思った経営者本人自身が変わる必要があります。各レッスンでは、そのための手法やツールが具体的に紹介されています。ここで詳しく述べる余裕はありませんがその内容は、全経営者必読です。きっと現状の課題を突破するヒントをここから得ることができるでしょう。
 後半に進むにつれ自身が主催するセミナーの宣伝に紙面が割かれていくのはいつもの神田節。この点は神田氏の「人間学」の限界を感じさせるところでもありますが、その商売っ気も、この濃~い本書の中では、どこか清々しさすら感じさせます。マーケター神田昌典という器いっぱいに盛られた「人間学」というギトギトの料理。ぜひご賞味あれ!

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