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『2040年の未来予測』

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成毛眞著
『2040年の未来予測』
(日経BP社、2021年)
2040年、今からおよそ20年後です。あなたはいくつになっていますか?
若い時分に20年後と言われても、それはほぼ永遠に来ない遠い遠い未来のことのように感じられたものですが、歳を取るにつれ、

そうでもないことを知るようになります(それは「自分もいずれ死ぬ」という厳然たる事実を実感していくプロセスでもある)。僕のような還暦近い人間は20年を、およそ3回経験しており、この直近の20年間なんてのは、すべてここ最近のことのように感じます。
今から約20年前と言えば、2001年――、この年に起こった最大の出来事と言えば何と言っても、9.11アメリカ同時多発テロです。リアルタイムでの記憶のない世代にとってこの事件は、僕ら世代にとっての太平洋戦争のようなものなのかもしれませんが、僕はそれが起こった時のことを、今でも鮮明に覚えています。夜10時過ぎ、ウイスキーを飲みながら漠然と「ニュースステーション」のニューヨークからの生中継を見ていたその最中、飛行機が猛烈な勢いでワールドトレードセンターに突っ込んだのです。その衝撃たるや、昨日のことのように脳裏に残っています。あれから二十年とは、まさに光陰矢の如し――と、こんな感じで、僕にとって20年前とは、一日一日の積み重ねの結果であり、今と地続きに感じるものなのですが、本書『2040年の未来予測』を読むと、これからの20年はそういう訳にはいかないような気もしてきます。少なくとも、これまでにないドラスティックな変化が起こることは覚悟しておく必要があるでしょう。
まず、この20年で確定的に言えるのは、6Gに代表されるインターネットテクノロジーにより、世界が一変するということです。家庭内のものはすべてインターネットでつながり、外では空飛ぶクルマや、宅配用のドローンが行き来しています。これらはすでに実用化に向けての研究が進められているので、2040年には、まず実現しているとみて間違いないでしょう。しかし、それ以上に確定的に言えるのは、現在のテクノロジーの延長からは想定できないことが実現しているということです。2040年までの20年間で、インターネットテクノロジーはいわゆる、「指数関数的」に進化します。縄文人が、スマホを想像できなかったように、2021年を生きる我われでは思いも及ばないことが実現しているのは、まず間違いありません。
著者成毛眞氏はこの状況を、「テクノロジーの進歩だけが未来を明るくする」と、非常に歓迎しています。僕は「こんなにもテクノロジーに過保護にされてしまうと、人間が退化してしまうんじゃない?」と必ずしも歓迎ばかりしていられない気持ちになりましたが、確かに、本書に記された、これからの日本、および世界が直面する課題を見ると、テクノロジーに期待せざるを得ないことがよくわかります。本書では、この20年に起こる課題を次のように述べます。
まず、日本。2040年の街中は、渋谷であれ原宿であれ、老人ばかりがウロウロしています。超高齢社会の深化により年金財政は逼迫し、貯蓄のない老人は生きていけないようになっています。そして世界に目を向けると、地球温暖化の影響が着実に出始めており、災害や飢餓があちこちで発生していると予測されます。これらは今のままでいけば、ほぼ不可避なものとされており、回避するには、テクノロジーの進化に一縷の望みを託す以外にありません。著者が「テクノロジーの進歩だけ」と言った所以はここにあります。
これからの20年とは、産業化以降に人類が作ってきたツケを一気に清算する期間となりそうです。乗り切れるかどうか?本書を読むと自信喪失してしまうことでしょうが、だからといって、そこから目を背けるわけにもいきません。2040年、僕は78歳になります。

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