JLINE 通販の勝ち組

『東大教授が教える知的に考える練習』

神開の書棚 お勧めする書籍
この記事は約3分で読めます。

柳川範之著
『東大教授が教える知的に考える練習』
(草思社、2021年)

本書著者の柳川範之氏は東大経済学部の教授ですから、紛れもない学歴エリートです。しかし、そこに至るまでの道のりはなかなかユニークなものがあり、父親の海外転勤のため高校には行けず、その赴任地ブラジルで独学で勉強し大検を受けて合格、そして東大大学院を経て今に至っているとのこと。ま、もともと地頭がよかったんだろうと言えばそこまでですが、このようなユニークな経歴から、柳川氏の独学法には注目が集まり、2014年には『東大教授が教える独学勉強法』として書籍にまとめられスマッシュヒットを記録しています。
そして、「東大教授が教える」シリーズ第二弾として満を持して登場したのが本書。今度は「知的に考える」術を伝授することを目標としています。
本書のような思考法に関する本は、これまでもたくさんありましたが、その中で近年もっとも読まれたものといえば、以前にこのコーナーでも紹介した外山滋比古氏の『思考の整理学』ではないでしょうか。この本が発行されたのは1986年、今から35年も前ということになりますが、いまだにインテリ学生には読み継がれているそうで、2000年以降、「東大・京大で1番読まれた本」に認定されているそうです。コンピューター社会の本格到来を迎えるにあたり、人間が頭を使うべきなのはクリエイティブな分野に限られてくると、今に至る未来を見事に言い当てているこの本は、確かに現在読んでも内容的にまったく色あせたところがなく、いまだにエリート大学生たちに愛読されているという事実も頷けるところです。
さて、なぜ今ここで、『思考の整理学』の話を持ち出したかというと、本書『東大教授が教える知的に考える練習』に書かれていることの多くが、『思考の整理学』の主張と重なっているように感じられたからです。と言って、柳川氏がパクったと言いたいのではもちろんありません。柳川氏が『思考の整理学』を参考にした可能性はありますが、本書に書かれたことは柳川氏の独創であることは、その経験に基づいた記述からして間違いありません。しかし、それでいてこの二冊の主張に共通なものを感じるのは、「思考の整理」と「知的に考える」とは結局、同じことを別の視点から言っているからなのだと思われます。
我われ人間は、起きている間は瞑想でもマスターしない限り、めったに「無」になる瞬間などなく、常に何かを考えているような気がしています。しかし、それは雑然として脳裏に流れるノイズのようなものに過ぎず、整理もされていなければ、もちろん知的な思考でもありません。それを整理し、知的なものに転換し、クリエイティブなアウトプットを生み出そうというのが、この二冊に共通する目的。人間にとって、ゼロから何か思考するというのは不可能であり、外部からインプットされた情報を整理し、抽象化し、組合せして具体化していくことが、「思考」であり、「考える」ことの本質と見ている点も、外山、柳川、両氏に共通する考えと言えます。
そんな中でも、本書独自のものと思われるのは、「考えるための土台」や「クセ」といった言葉が何度も登場していることが示すように、知的に考えるためには、それがクセとなるまで繰り返す必要があると主張する点です。タイトルに「練習」という言葉があるのは、そういう理由からで、本書は読んでそれっきりではなく、繰り返し実践していくことを求めます。オビにある「『頭の良さ』とは習慣である。」がそれを一言で言い表しています。
本書は『思考の整理学』を別の視点からとらえ直すことで、その考えを補強しながら、それが実践的に身につくまでをカバーしています。『思考の整理学』を読んで感心された方、ぜひ本書も読んでください。

タイトルとURLをコピーしました