読めば確実にあなたの血となり骨となり、
さらには武器にもなるであろう書籍を毎回一冊ご紹介。
今回取り上げるのは、こちら――
ジョセフ・シュガーマン著
『シュガーマンのマーケティング成功事例大全』①/②
(ダイレクト出版、2011年)
著者はダイレクト・レスポンス・マーケティング(DRM)における
伝説的コピーライターにして、大成功を収めた通販会社の起業家。
1961年にレスター・ワンダーマンの提唱で始まったDRMをその初期から実践し、
コピーワークを始めとする技術的な発展に大きく寄与してきた著者のキャリアは、
20世紀のDRM発展史そのものだといえます。
原著“Marketing Secrets of a Mail Order Maverick”が刊行されたのは、
1998年。技術的イノベーションにより、
DRMが爆発的な進化を迎える、まさに前夜というべき時期です。
本書では、「レッスン」と「ストーリー」を交互に語ることにより、
20世紀のDRMを総括しながら、来る21世紀の姿を予見します。
マーケターとしての深い洞察と経験に裏打ちされたその内容は、
刊行から20年近くを経た今でも十分通用する実戦的なものばかりです。
また、それとは別に、第2巻巻末に付録として収められた
39のスワイプ・ファイル(コピー事例集)は圧巻の一言。
オリジナルを忠実に再現することを旨とした翻訳は本当に絶品で、
私のようなスワイプ・ファイルマニアにとって垂涎ものなのは言うまでもないことです。
コピーやセールス・レターを日々の業務の中で書かれている方にとっては、
スワイプ(=借用)できるフレーズの宝庫となっています。
ここの部分だけでも読む価値有りだと断言できます。
しかし、今回私がこの本をお勧めする一番の理由は、実は別にあります。
上に記した原著のタイトルをもう一度ご覧ください。
最後にある“Maverick”という単語の意味、あなたはご存じでしょうか?
この単語はアメリカ西部の開拓者Samuel Maverickを語源とする一般名詞で、
日本語では「異端児」などと訳されます。
そうです、著者は開拓者にして異端児なのです!
本書では、起業家として成功する前はもちろん、
成功後も一貫して“Maverick”であり続ける著者の姿が、誇り高く語られます。
その精神は2017年の現在でも、DRMの神髄そのものであり、
今後ますます求められるものだともいえます。
本書はその意味で、DRMの実用書である以上に、
「DRM魂」ともでも呼ぶべき感性を涵養するのに、
これ以上にない一冊といえます。
“Be a Maverick !”
こんな言葉、この著書のなかに1度も出てきはしません。
が、その行間から、こう叱咤する筆者の声を、読者は耳にするでしょう。
“Maverick”の精神で、今年一年も乗り切りませんか。