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『小さな会社だからこそ、DMは最強のツール!』

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中村ブラウン著
『小さな会社だからこそ、DMは最強のツール!』
(WAVE出版、2019年)

著者の中村ブラウン氏は、電通グループの広告代理店等でシニアコピーディレクターとして、20年以上に渡ってBMWのブランディングを支える一方で、全日本DM大賞などの国内外の受賞歴を持ち、ダイレクトマーケティング界隈でも非常に有名な方です。
ブランディングとダイレクトマーケティング。どうもマーケティングの世界では、この2つを別ものと見るというか、ややもすると対立構造に捉えがちですが、中村氏はBMWにおいて、この二つにシナジーを生じさせ独自のマーケティングを展開することに成功してきました。
そのキーとなったツールがDMです。


中村氏は本書の冒頭で次のように言います。
紙DMは、顧客の行動に影響を与える手法(センサリーマーケティング)として、世界的に再注目されています。簡単にいえば、実際に手に取って見てもらえ、「見て、触れて、読んで、嗅いで」と、読み手の五感を刺激することで、人の心に訴えかけるマーケティングツールといえるわけです。
なぜこのようなことが言えるのか。その背景には昨今のデジタルマーケティングの隆盛があることは明らかです。デジタル技術により、効率よく広範にメッセージが届けられるようになりました。しかし、それにより「五感を刺激する」というコミュニケーション本来の醍醐味がスポイルされることにもなっています。中村氏も指摘するように「今の時代、顧客の心理は、手に取って、体験として楽しめるものを求めている」のであり、DMはデジタルが中心的な役割を担うようになればなるほど、「体験」的な役割を担うようになっています。実際、EメールによるDMがほとんど開封されないのに対し、紙DMの開封率は74.3%、行動率22%であることが本書では示され、「体験」価値が実は効率性も高めることを明らかにしています。
 しかし、ここで間違えてはならないのは、中村氏が「紙DM」、「デジタル」をどちらが優れているといった不毛なことを言おうとしてるのではないということです。「ブランディング」と「ダイレクトマーケティング」がそうであったように、「紙DM」と「デジタル」にシナジーを生み出すことにこそ、本書の目的はあります。ここに中村氏のマーケティング観というものが集約されていると言えます。本書はそういった中村氏のマーケティング観を元に「ターゲティング」、「アテンション」、「メッセージ」と、DMの戦術的ノウハウを惜しみなく公開し、そして「アクションプラン」という戦略面にまで言及されていきます。また、その上で最終章では「エリアマーケティング」というDMが最も効果を発揮するフィールドについて述べ、タイトルにある「小さな会社だからこそ」という期待にちゃんと応えます。マーケティングで一番大切なことは顧客の視点に立つことと言われますが、本書の構成はまさに読者視点に沿ったものであり、この辺りにも中村氏のマーケターとしての腕の確かさを感じます。本書は中村氏からマーケターへ送ったDMでもあるのです。
数年前、どういう経緯からかは忘れましたが、僕のところにBMWよりDMが届きました。車にそれほど興味のない僕でしたが、そのDMのセールスレターとしての完成度の高さに感動し、しばらくそれを参考に(パクって︖)、DMを作っておりました。そんなこともあり購入した本書でしたが、なるほど、こういうことだったのかと読んですべて腑に落ちました。本書を読むとDMを出さずにはいられなくなることでしょう。

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