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河合雅司著『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』 (講談社現代新書、2017年)

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日本の未来を予測する。
そういう本なら書店に行けば掃いて捨てるほどありますが、

この本が他のそういった予測本と一線を画し、
また昨年度を代表するベストセラーになった理由は、

それを「年表」で示したところにあります
(もっともこの本のヒットにより、亜流本はいくつか出ているようですが…)。

しかし、年表とはいったい何か? 

それは、出来事を発生順の時系列で並べていくことによって
捉える「歴史の一断面」の描写であり、

それを制作するには、常に「神の視座」が常に要求されます。

ですので、神でも仏でもない者がそれを描けるのは通常、
すでに確定している「過去」のことに限定されています。

しかし、本書ではその焦点を「未来」に合わせるという、
何とも大胆な試みがなされます。

現在の状況から演繹して、
未来を導出したりシミュレーションしたりする本は他にいくらでもありますが、

本書のように向こう100年間の年表を描いた本というのは、
管見の及ぶ限りありません。

しかも、本書はこの大胆な試みに成功し、
必ず成就する未来の年表がここに成立しています。

まったく著者には脱帽する思いですが、
予言者でもない人間に、なぜこんなことができたのか?

それには理由があります。

実は、本書のテーマである人口の推移や
それに付随して発生する事象については、
かなり正確に未来を記述することが可能なのです。

考えてみてください。

人口とは出生数と死亡数の相殺で導かれるものですが、
その母集団となる層の数がすでに現在の時点で確定している以上、
それは未来のことでありながら
――もちろん天災やテクノロジーの進歩など不確実な要素はありますが――、

すでに現在確定していると言えることなのです。

少子化対策を今からやったところで、
その効果が出るには少なくとも30年はかかり、
それはすでに8敗した力士がその場所での勝ち越しを目指すようなもの。

したがって、この本で示された年表は、
少なくとも2050年くらいまでは、
概ねそのまま進行していくはずです。

占い師の予言や、競馬の予想のように「当たった!」、
「ハズれた↓」などと一喜一憂しながら答えが出るのを待つ必要のない、

すでに今の段階で確定している未来の事実が
ここには記されているのです。

この年表の中身について詳しく述べる余裕はここではありませんが、
日本が、有史以来一度も経験したことのない局面に、
すでに突入しているとは間違いなく言えそうです。

この年表が示すとおり、国家としての縮小はもはや不可逆なものと言えるでしょう。
しかし、それを「衰退」や「不幸」ととらえて、ただ悲嘆に暮れていても仕方ありません。

著者は「日本を救う10の処方箋」を提示し、
そのキーワードとして「戦略的に縮む」、「豊かさを維持する」をあげています。

それは端的に言えば、「縮小」を「成熟」に転化し、
労働観、価値観を再構築することです。

GDPランキングはこの先確実に落ちます。
しかし、国民一人ひとりの「幸せ」は、

これからのわれわれの取り組み次第。

8敗した力士(=日本)が勝ち越すことはない。
が、そんな力士に、「腐るのはまだ早い」と元気づけて道筋を示す。

本書はそういう、ちょっと変わった「希望の書」と言えます。

産経新聞論説委員らしいマッチョな国防論なんかも一部ありますが、
これはまあ、ご愛嬌。

これからを担う10代の人たちに絶対読んでもらいたい一冊ですね。

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