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『アテンション』

神開の書棚 お勧めする書籍
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ベン・パー著
『アテンション』(飛鳥新社、2016年)

 『アテンション』という邦題(原題は“Capativology”、「魅了する」という意味の単語をもじった著者の造語)が付されたこの本、発売されてから3年以上が経ったにもかかわらず、今でも書店のビジネス書コーナーで平積みされているの をよく目にします。われわれマーケターにとって「アテンション」と 言えば、AIDMAの最初のAであり、それの獲得のために毎日四苦八苦しているのですが、その状況は昨今のSNSの普及と相まって、マーケティング業界などという狭い世界を飛び出し、今や世間一般で共有されるものとなったようです。「アテンションを獲得したい=注目されたい!」は、現代人を象 徴する心の叫びの一つと言えるでしょう。
 それを示す極端な事例として、犯罪まがいの悪ふざけをしては、それをわざわざ動画で流して世間から大顰蹙をかう、若者たちがあげられます。これなどはまさに「注目されたい!」という願望の病的な肥大化をうんだ、実に浅ましい現象です。みんながみんな「注目されたい!」と思うということは、逆に言えば、それだけ注目されることの競争率が高まるということであり、このような若者の続出する背景にはこの苛烈を極める「注目」競争があることを見逃してはなりません。何らかの芸や才能があれば別ですが、そういうものの何もない大多数の凡人が注目されるのは、いつの時代でも大変なこととはいえ、今はとりわけ絶望的な状況と言えますよね。
 本書『アテンション』のヒットからは、以上のような時代的コ ンテキストを読み取ることが可能です。しかし、本書はそこで凡人に対して絶望を勧めるのではなく、「注目されたい!」と いう願望を満たすことを可能にする7つの「トリガー(引き金)」を提示します。「自動」、「フレーミング」、「破壊」、「報 酬」、「評判」、「ミステリー」、「承認」と各トリガーには目からうろこの報告に事欠かないのです。しかし、ここでは、それらすべての前提となる「注目の三段階」について触れることで、本書の概観を記しておきたいと思います。
 下の図に示したとおり、注目には「即時」、「短期」、「長期」の3つの段階があります。最初の「即時」の注目とは、感覚としては受容したが、記憶に残る一歩手前で揮発していった情報のことを言います。以降、「短期」、「長期」と記憶に残るスパンの長さで「注目」を段階分けしていきます。
 「即時」の段階で99.9%の情報が離脱しているという事実に鑑みると、「即時」の注目こそ、この三段階の中でもっとも高い関門と言うことができます。これはまさに、ダイレクトマーケ ティングにおいて、顧客のステージが上位行程にいけばいくほど、コンバージョンレートが上がることを連想させますね。本書の主張は、心理学や脳科学の最新の研究成果を基に進行していきますが、著者のパーさん(林家じゃありません)は、学者や研究者ではなく、シリコンバレー気鋭の起業家です。本書はアカデミックな学術書としてではなく、ビジネスの現場から書かれた「注目されるための実務マニュアル」として読まれるべきです。
 エンパシーライティングの中野巧さんが絶賛していたので 買ってみたのですが、確かに絶賛するに値する読み応えでした。翻訳本特有の読みにくいところも多少はありますが、巻末に 掲載されたインフォバーンの小林弘人氏の解説だけでも読む価値あり。是非読んでみてくださいね。

注目の三段階(三つの焚き火)

点火

即時の注目

周りの世界に対する素早い無意識の反応

藁火

短期の注目

特定の出来事や刺激に対する短期的な集中

焚き火

⻑期の注目

アイデア、製品、メッセージ、目標、仕事などに対する⻑期的な興味

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