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『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』

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本田哲也著
『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』
(オフィス・トゥエンティワン、2017年)

PRの歴史は古く、本書によるとその起源は18世紀の米独立戦争にまでさかのぼるとのこと。もともとは政争における世論誘導のノウハウとして開発・発展し、それがやがて「パブリックリレーションズ」として、ビジネスに転用されて今日に至っています。アメリカの近現代史というのは、「PRの発展史」という見方も可能であり、PRとはアメリカ文化そのものと言っても過言ではありません。
一方で、我が国はどうかというと、この分野における世界水準からは、「周回遅れ」であるというのが、本書著者、本田哲也氏の見立てです。本田氏によると、日本はモノづくりにおける技術力では圧倒的に勝りながらも、PR力が不足しているために国際競争の場で他国にリードを許してしまっているケースが多くあるとのことです。グローバル社会において「PR力」というものが、いかに重要かを示す事例と言えるでしょう。

日本がPRを苦手としている理由には諸説あるようですが、「PR」という言葉に適当な日本語の訳語が与えられていないことが象徴するように、日本人の感覚にはなじみにくいものがどうやらあることは事実のようです。たとえば――広告とPRの違いは?
と聞かれて明快な答えを出せる人はどれくらいいるのでしょうか?正直言いますと、僕もこの2つをクリアカットにバッサリと分けることはせず案件や施策ごとに、それが広告なのかPRなのかを感覚的にとらえていたような気がします。広告かPRかというのは、玄人好みのマニアックな手法の問題で、最終的な目標はどちらも「人を動かす」という点。目標が同じであるのならば、あえて分けて考える必要はないのではないか、というのが僕の偽らざる感覚でした。

しかし、本書を読み、僕のこの感覚がいかに日本ローカルなもので、グローバルスタンダードなものではないかということを痛感しました。いや、実際には、世界的にもSNSを始めとするPRツールの進化により、広告とPRを分けて考えることの意味はなくなりつつあることは本書でも指摘されています。しかし、先述のようにPRというのは、欧米社会においては一つの「文化」なのです。それを理解しない限り、「周回遅れ」である日本はグローバル社会からますます取り残されていくことでしょう。本書執筆の発端には、本田氏のこのようなPR後進国、日本に対する危機意識があったのではないか――僕にはそのように思えます。
本書はこのように、その射程は「グローバル」と非常に壮大なものに向けられていますが、ここで示される「6つの法則」は企業規模の大小にかかわらず、いや、むしろ広告にそれほど大きな費用をかけられない中小企業こそ実践するべきものが示されています。

1.おおやけ_「社会性」の担保
2.ばったり_「偶然性」の演出
3.おすみつき_「信頼性」の確保
4.そもそも_「普遍性」の視座
5.しみじみ_「当事者性」の醸成
6.かけてとく_「機知性」の発揮

いずれの法則も人間心理に基づいたもので、効果的なセールスレターの書き方などと共通したものを感じます。しかし、2.は広告にはないPR独自のもので、「空気づくり」を介して、「人を動かす」PRの奥深さを感じずにはいられません。本書はその奥深さを豊富な事例を基にじっくり学べます。マーケターなら最低2回は読むべきでしょうね。

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