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カーマイン・ガロ著 『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』

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カーマイン・ガロ著
『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』
(日経BPマーケティング、2010年)

 

スティーブ・ジョブズが亡くなられたのは、
2011年ですから、もう7年にもなりますか……。

 

死後7年を経て、彼の功績や人物に対する歴史的な評価も、

ある程度定まってきたように思います。

 

ジョブズと言えば、まずは何と言っても天才。

 

そして破天荒な型破りにして、
コンピューター界の革命児――。

 

同い歳で同業のライバルでもあるビル・ゲイツとは、
ともに20世紀後半から21世紀初頭にかけての代表的人物でありながら対照な印象です。

 

いずれにしても、旧来の偉人像からは
遠くかけ離れた人物として、
後世に語り継がれていくことでしょう。

 

 しかし、そんなジョブズのイメージは、
彼の一面を捉えているに過ぎません。

 

彼の本質は、その「プレゼン」に集約して表れます。

本書『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』は、
それをシンパシーたっぷりに、かつ実践的な視点から
解き明かしていく一冊です。

 

2010年の初版発行以来、「プレゼンのバイブル」として、

いまだに版を重ね続けています。

 

 原著”The Presentation Secrets of Jobs”が
アメリカ本国で刊行されたのは2009年10月。

 

この時期はちょうどジョブズが激やせし出し、
健康問題が取りざたされ出した頃にあたります。

 

翌2010年にはiPADの発表会において、
奇跡の復活を遂げます。

 

しかし、それを最後にジョブズは表舞台から退きます。

 

本書は2001年のiPODから

2008年のMac Book Air発表まで(2007年にはiPhone発売)の、

まさにアップルが世界を変えた8年間、

そしてジョブズにとっては最後の最盛期に当たる時期を、

「プレゼン」という観点から切り取った
ドキュメンタリーであると同時に、

その技法を具体的に指南する実用書という、
2通りの読み方が可能な作品とも言えます。

 

また、ジョブズ在世中に読むのと、
発刊から10年近くたった今読むのとでは、
本書を読む意味合いも変わってきているのではないか。

 

そんな印象を、僕は本書に持ちました。

 

 2009年当時、世界を魅了し続けるジョブズのプレゼンは、

ある意味神秘的で、その天才性と、カリスマ性を
もって初めて成立する、

 

一回限りのものという見方が一般的なものだったように思います。

 

カール・ポパーは「科学性」の定義を「反証可能性」に求めましたが、

その論法を借りるなら、

 

彼のプレゼンはアートであり、パフォーマンスであり、場合によっては

宗教儀式に分類されるべきものということになるでしょう。

 

本書は、そんなプレゼンを脱構築し、
「18の法則」へと分解します。

 

表面的にその技法を追うばかりでなく、
そこに込められた意図や設計、計算しつくされた
演出をこと細かに考察し、

 

さらに、それらすべての基盤となる圧倒的な努力についても言及します。

 

再現不可能と思われていたジョブズのプレゼンを、
「頑張れば誰でもできる」ものへの転換が図られてゆくのです。

 

 本書のヒットにより、世の中のプレゼンのフォーマットは一新し、

世界中に「ジョブズもどき」が現れました。

 

これはこの本の功罪とも呼ぶべきところですが、
それで逆に改めて浮き彫りになったのは
スティーブ・ジョブズの唯一無二性です。

 

「頑張れば誰でもできる」のは確かにその通りかもしれない。

 

 しかし、ジョブズのプレゼンは、結局、ジョブズ一世一代のものであることを、

彼亡き後に、世界は知りました。

 

本書を傍らに、実際のプレゼン動画を見ていただくと、

そのことをご確認いただけます。

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