読めば確実にあなたの血となり肉となり、
さらには武器にもなるであろう書籍を毎回一冊ご紹介
今回取り上げるのは、こちら――
リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著 『LIFE SHIFT』
(東洋経済新報社、2016年)
「人生80年」なんて言い方もあるように、ほとんどの日本人は、
自分もおそらくそれくらいまでは生きる
(=それくらいで死ぬ)のだろうと漠然と思い、
それに合わせた人生設計をしているのではないでしょうか。
僕もこの本を読むまでは、だいたいそんな感じでいたような気がします。
しかし、本書の原題”The 100-Year Life ”が示すように、
今後そんな考えは、どうやら捨てた方がいいようです。
本書には、次のような衝撃的な記述があります。
「今20歳の人は100歳以上、40歳以上の人は95歳以上、
60歳の人は90歳以上生きる確率が半分以上ある」
「2007年に日本に生まれた子どもの50%は107歳まで
生きる」にわかに信じがたいと思われた方も
いらっしゃるでしょうが、
この数字は過去200年にわたる平均寿命の推移と、
今後の医療の発展可能性などを掛け合わせて
算出されたものですので、非常に説得力があります。
そうです、今を生きる僕らは、100歳まで生きると思って、
これからの人生を組み立てていかなければならないのです。
これは実に大変なことです。
なんせ80年で終わるはずだった人生が20年も延びる
のですから!
――まず何よりお金の問題。20年分も余計にお金が
かかりますので、65歳で引退なんて悠長なことは
なかなか言っていられなくなります。
この本では、1945年生まれのジャック、1971年生まれのジミー、
1998年生まれのジェーン、という仮想の
登場人物の人生を描くことで、
それぞれの世代の生き方を比較検討していきますが、
最初のジャックが62歳で引退(71歳で死去)
したのに対し、
100年ライフ世代にあたる最後のジェーンは85歳まで働きます。
80過ぎまで現役なんて・・・・
今なら伝統工芸の職人さんくらいしかイメージできませんが、
今の10代がその歳になるころには、
それが普通になっているとのことのです!
また、100歳まで生きるとなると、
問題はお金だけではありません。
仮に運よく資産があり、65歳で引退できたとしても、
そこから35年にわたる長い余生が待っていることも
忘れてはなりません。
その時間を有意義なものにするためには、
家族や友人関係、肉体的、精神的幸福、
自分についての深い知識、多様な人的ネットワークなどの
「見えない」資産、無形資産を蓄積していくことが重要になります。
つまり、お金とこの無形資産。
100年ライフを楽しいものにするためには、
この2つをいかにバランスよく作っていくかがカギと
されます。
そのためには、「教育→労働→引退」という、
「人生80年」の枠組みの中で常識となっている
3ステージモデルの呪縛から逃れ、
変化と挑戦に満ちたマルチステージモデルへの移行が、
これからを生きる人間には求められていると
筆者は説きます。
本来喜ぶべきはずである長寿を、
その本来のものにするための刺激的な論考であり、
これからの時代を生きる一つの手引きとしても、
多くの方に読んでもらいたい一冊ですね。