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『 考える術 』

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藤原麻里菜著
『考える術 』
(ダイヤモンド社、2021 年)

「SNS 総再生回数 4000 万回突破 」 、 「 令和最強「 鬼才 」 発明家の超技法 」 、 「 米国 、 欧州 、 中国 海外でも話題沸騰 」 と 、 オビにはずいぶん威勢のいい言葉が並んでいます 。 そしてその中心に立つ無表情の若い女性 。 そこそこ美人なんだから 、 もっと笑うなり愛想よくすりゃいいの

に 問題発言 と 、 思ってしまいますが 、 この装えない感じ いや 、 本人は十分装っているつもりかも が 、 本書を読み終えた今にしてみれば実に彼女らしく感じ 、 改めて見返して思わず笑ってしまいました 。巻末に記されたプロフィールによると、 本書著者 、 藤原麻里菜氏は 、 1993 年横浜生まれの発明家 、 映像クリエイター 、 作家 。 発明家といえば 、 エジソンに代表される 、人類の進歩に寄与するような画期的なモノを開発する偉人というイメージがあります 。 しかし 、 藤原氏の場合は発明家は発明家でも 、 そういうイメージとはちょっと違います 。 巻末プロフィールは以下のように続きます 。頭に浮かんだ不必要なものを何とかしてつくりあげる 「 無駄づくり 」 を主な活動とし 、 YouTube を中心にコンテンツを広げている 。つまり、 藤原氏の発明するものはすべて 「 不必要 」 なものなのです 。 本書に登場する発明品をあげると 、謝罪メールパンチングマシーンズボンのチャックが開いていると LINE がくるマシーン VR 草原トイレ イントロクイズ目覚まし時計 ラーメンの画面をすべてネジにするアプリ 畑に吊るされた CD のクラブイベント 全員ダサくなる AR ゴーグル など、 まごうことなき不必要のオンパレードです 。 こんなもの 、なくて困るという人はこの世に一人もいないでしょう 。 これが商業的に純粋な発明であれば、 まさに 「 不必要 」という理由で即座に切り捨てられ 、 それ以上には進展しないものとなるのでしょうが 、 藤原氏はそれを SNS 上の映像コンテンツとすることにより 、 シュールとも個人的情念ともつかない 、 独自のエンターテインメントに昇華しています 。 藤原氏の一番の発明は 、 実はこの何ともジャンル分けのしづらい独自のエンタメコンテンツを開発したことにあるように思え ます 。 その意味で彼女はやはりオビにあるとおり 「 鬼才 」 です 。エジソンのような 「 天才 」 は例外として 、 発明家には 「 鬼才 」の系譜があり Dr 中松氏しかり 、 藤原氏は一見奇をてらっているように見えて 、 実は王道をいく発明家なのです 。発明家とは 「 発明家 」 という観念それ自体を発明する 。 さて、 本書は 、 そんな鬼才が提唱する 「 ~から考える 」 を主題とした 8 つのチャプターで構成され 、 その中に合計 71 の「 考える術 」 が示されています 。 あたかもピン芸人のフリップ芸のような独自のテンポとロジック展開があり 、 随所にクスリ爆笑ではない と させられる ものがありました 。 また 、 抑制の効いたその語り口には文才を感じます 。 しかし 、 ここで示される 「 考える術 」 はあくまでもエンタメに有効なもので 、「 必要 」 を要件とする我われビジネスパーソンがそのまま商品開発などで使えるものではないように感じられたのも事実です 。 ここには 、 ケガをしたわけでもないのに利き手でない方の手で 、 文字を書く練習をするのと似たものをおぼえます 。 それは不必要なことのように思えます 。 しかし 、 それをすることにより脳が活性化されることはよく知られています 。 それと同じように 「 不必要 」 なものを考えることも 、 「 必要 」 に凝り固まった我われの脳を大いにほぐし 、 「 必要 」 の先にある未知の副産物を生み出してくれるのではないかという期待を抱かせてくれます 。 僕はそれを信じ 、 本書を当面の座右の書として 、 繰り返し読んでいこうと決めたのでした 。

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